河本家の古文書調査から(vol.23) 2017.5.4
大 庄 屋 11 代 長 兵 衛 の 仕 事 ぶ り
講演: 坂 本 敬 司 さん
はじめに
河本家古文書調査の現状
平成18 年1 月から、毎月1 回調査を実施中。
古文書全体段ボール約80 箱の内、60 箱分の目録作成。点数約13,000 点。
現在、11 代長兵衛の大庄屋在任中(文政~天保)の史料を整理中
昨年秋には、その中から「八橋郡給所物成渡帳」(天保3・1832 年)を紹介
1 11 代長兵衛の公職
拙著『大庄屋と地域社会』で紹介した仕事
宗旨庄屋(文政6・1823 年~文政11・1828 年)
文政7・1824 年「八橋郡御断帳」を通じて、宗旨庄屋の仕事を紹介
住民の婚姻・養子縁組等の届(宗門改帳の管理)、寺社の諸届・願の取次
大庄屋(西構)(文政11・1828 年~天保4・1833 年)
天保4・1833 年の赤崎村さわ・定四郎変死一件と長兵衛の大庄屋罷免
事件への対応、藩役人・手代・村役人等との関係
大庄屋(西構)(安政2・1855 年~安政3・1856 年)
安政2・1855 年の在方改革・宛口米調査
土地・年貢の実態の把握
2 大庄屋へ各村が毎年提出する文書(天保2・1831 年)
(1)地井手帳・御手懸帳(1~3 月)
各村が管理する用水(地井手)と、藩が関与する用水(御手懸井手)の届
(2)駒子御改帳(5 月)
その年に生まれた馬の届
(3)御貸米人別帳(6 月)
春に藩が貸し付ける三歩御貸米・牛銀を受け取った人名の届
(4)作高無作人取調帳(6 月)
村全体の作付け高と、耕作しない村民、その理由
(5)若者頭・奉公人頭帳(6 月)
村内の若者頭(若者組の代表)、奉公人頭の届
(6)当毛荒御改帳(6 月)
その年の不耕作地(年貢免除地)の届
(7)早稲中田御改帳(8 月)
早稲・中稲の耕作者と耕作面積の届(早めに納める年貢米量の把握のため)
(8)晩稲収納御改帳(8 月)
晩稲米の年貢納入予定の届
(9)御年貢米請合帳(8 月)
各村がその年の年貢を確かに納めることを誓約するもの
(10)植木書上帳(9 月)
櫨・楮など、商品の原料となる樹木の植付者と植付本数
大庄屋はそれを一冊にまとめて、藩に報告(八橋郡村々植苗書上帳)
(11)別取立帳(10 月)
年貢以外の雑税(夫口米・糠藁縄代、川役代米等)の届
(12)御勘定目録(12 月)
年貢やその他の負担についての決算報告
他に、大庄屋が作成するもの
(13)麦年貢酒運上取立帳(6 月)
村に対してでなく、個人が納める運上の負担者と額
3 郡にかかる夫役の管理(天保2・1831 年)
春は、井手(用水路)の維持管理作業(地井手帳・御手懸帳に基づいて実施)
夏・秋の農閑期に、郡関係の土木・建築事業を実施、その管理が大庄屋の仕事
(1)八橋郡村々日雇役通辻帳・八橋郡赤崎御蔵御修覆人夫役通辻帳(6 月)
日雇いとして出役した人名と日数を記載
(2)八橋郡村々日雇役通辻帳・八橋郡赤崎御蔵御修覆人夫役通辻帳(10 月)
同上
(3)八橋郡村々秋分御普請品々御銀辻帳・八橋郡赤崎御蔵御修覆品々御銀辻帳(11 月)
普請等に要した物品の量とその代金
(4)八橋郡村々所々御普請御銀御渡帳・八橋郡赤崎御蔵御修覆銀御渡帳(12 月)
普請等に要した経費(人夫賃金・物品代)の支払い記録
4 臨時の業務(天保2・1831 年)
(1)八橋郡村々旱損場下改勤日帳(10 月)
この年の旱魃によって被害を受けた土地を調査する改人の勤務日数の届
(2)八橋郡赤崎村行死人所持品預り帳(11 月)
行き倒れ人の所持品を列記、赤崎村庄屋作成
おわりに
各村が大庄屋に提出する帳簿は、少なくとも年12 冊
その作成・提出を督促するだけでも、大変な業務量、しかもそれをきちんと保存
八橋郡西構(河本家管轄)は約30 村、年間12 冊×30 村=360 冊、
11 代長兵衛の大庄屋在任期間は約5 年、360 冊×5 年=1800 冊
それを一点づつ整理しているためには、時間と労力が必要
興味のある方は、整理に御協力を